拡大鏡とマイクロスコープ
近年の歯科における先進機器のひとつにマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)が挙げられます。また、拡大鏡と言われるコンパクトな装置もあります。これらの装置は、どのような差があるのでしょうか。
マイクロスコープの特徴
マイクロスコープは、よくドラマで脳外科の手術で使われているようなものの歯科バージョンです。
マイクロスコープの特徴には、以下のようなことがあります。
- 最大拡大率が大きい。
- 拡大率の変更ができる。
- 機械の可動範囲の制限により、肉眼や拡大鏡より直視できる範囲が狭く、ミラーで治療する範囲が増える。機種によっては可動範囲が狭すぎて、直視による治療がぼぼ不可能なものもある。
- 機械が大きくて処置の邪魔になることがある。機種によっては、器具が対物レンズに当たりやすい。
- 本体を細かく頻繁に動かすことが大変で、視野を変えることが難しいため、立体視しづらい。
拡大率が高いということ以外には、実はデメリットが非常に多いマイクロスコープです。沢山のデメリットがあったとしても、根管内のようなとにかく細かい部位を治療する際は、マイクロスコープが必須と言えますが、最大倍率を使用しない局面も実際は多いはずです。
拡大鏡の特徴
拡大鏡は、顔に装着するタイプの大きな虫眼鏡のような装置です。よくドラマの心臓外科の手術で使われているものと同じようなものです。
拡大鏡の特徴には、以下のようなことがあります。
- 拡大率は2倍~10倍程度
- 拡大率の変更は不可能。
- 頭が動く範囲で自由に視野を変更できるので、直視で治療出来る範囲が広い。
- コンパクトなので、処置の邪魔になることがほとんどない。
- 頭が動く範囲で視野を自由に変更できるので、立体視しやすい。
正直、歯科治療で肉眼や2~5倍程度の拡大率では少し物足りないと私も思います。しかし、6~10倍の高拡大率の拡大鏡では、マイクロスコープの中拡大率程度あり、さらに直視も立体視もしやすいという大きなメリットがあります。根管治療ではさすがに倍率が足りませんが、詰め物や被せ物の治療では、歯の立体的な形がわかることがとても大事なので、立体視しやすいメリットはとても大きいです。
肉眼の特徴
マイクロスコープや拡大鏡を使用しない肉眼も歯科治療で活躍します。
- 視野が広い。
- 色が正確にわかる。
拡大しないので、もちろん視野は広いです。木を見て森を見ずということわざがあるように、広範囲に見ることは場合によってはとても大事です。また、レンズを介さず、補助ライトも当てないため、色が最も正確にわかります。歯科にとっては色合わせは大事な要素なので、肉眼でもしっかり確認することはとても大切です。
マイクロスコープを使うことを目的にしないこと。
歯科治療の成功率を上げることが患者さんにとっての利益につながります。マイクロスコープを使用することは、あくまで目的を達成するための手段であって、目的となってはいけないと当院では考えております。マイクロスコープを使用することが患者さんへのアピールになるからといって、不要なところで使ってしまって、結果がより悪くなってしまったら意味がありません。
色々な治療手段を身に着けて、ケースによって適切な手段を利用して治療を行い、成功率を上げることこそが大事だと考えています。